2008年12月22日

生きること! インドのスラム街より

3日前に、バラナシからカルカッタへ戻って来た。
どうしても、一つやり残したことがあった。

前回の滞在では、カルカッタの町の混沌とした様子と大気汚染の酷さ、マザーハウスでのショッキングンな風景、そして下痢に見舞われ、納得するところまでカルカッタの町を見れていなかった。
特に、貧困者の生活や人生観、そして彼らが投げかける人生やこの世界に対するいろいろな疑問への答えを、もう少し追及したかった。

旅のはじめ中国の砂漠植林ボランティアのときに、カルカッタのスラムで活動するNGOを訪ねた話を聞いた。
自分たちの人生をかけて、スラムの人々を助けようとしている夫婦がいると、、、

訪れた場所はカルカッタの中心から10分ほど車で走ったところにあるダーパという10万人の人が住む巨大スラムの一角。
この一角は50年以上前から、大都会カルカッタのゴミ捨て場として使われてきた。
同じ頃、都市での仕事を求めインド中からカルカッタに多くの人がやってきたが、まともな生活が出来るような仕事にありつけるない人たちが集まり、ゴミの上にスラムが出来ていった。

ただでさえ汚いインドの街のゴミの上に出来たスラム、想像できる限りの劣悪な生活環境がここにある。

廃棄物の規制などまともにあるわけのないインド、あったとしてもここでは汚職でまったく何の規制もない。
そんな状況で、産業廃棄物や医療廃棄物に含まれる汚染物質の量と種類はとてつもないだろう。この点だけ見たら、戦場の方がまだましかもしれない。
下水システムがないためにトイレや排水の水は全てこの川に流れる。
当然、常に汚臭がする。
流れる川の湖面はゴミで埋まり、堆積したヘドロからガスが出てそこら中から泡がポコポコと出る。
そして、その川のすぐわきでは、ブロッコリーなどの野菜が作られ、しかも、たっぷりの農薬と化学肥料をつかって育て、野菜は街へ出荷されている。


スラムの住民には、チフス、小児ガン、皮膚病、障害児、コレラ、デング熱などなど、
劣悪な生活環境、環境汚染がもたらすあらゆる病気が溢れる。
NGOが持つ、救急箱には薬が溢れるが、当然、薬だけでは間に合わず、バタバタと人が死んでいくという。

仕事は、すぐ近くにまだあるゴミの山から、プラスチックなどリサイクルできるものを集めて売ることや、街での露店、ゴミ収集、などなど、
大体、一日中働いても50円くらいにしかならない仕事ばかりだ。
当然この金額では、十分に暖を取ることも、十分に食べることも、十分に教育を受けることもままならない。なんとか生きていくのが精一杯の状況になる。

そして、そんな状況に、更に追い討ちをかけるようなことが起きている。

インドの急激な経済発展の中で、この街にも開発の波が打ち寄せている。
空港からカルカッタの中心街へといく道路がスラムのすぐ脇を走る。
そのために、誰もが知っているいくつかの世界的なホテルの建設が予定されている。
政府がお金欲しさに、大企業に土地を売ってしまった。
既に、昨年スラムのある一角は、大型ブルトーザーなどを使った強制立ち退きがおこなわれ、土地は政府に奪われてしまった。

カーストと呼ばれる宗教的な階級制度に始まり、インドでは社会全体に腐敗がはびこる。

元々、政府の土地とはいえ、スラムの人たちから家賃を取り、それなりに生活を認めてきた。
そして、もっと大きなお金が入るとなったら、今度は、そこで生活している人たちの命を考えることもなく、力づくで、追い出そうとする政府。
そして、それに対して、何も言わない世界的な大企業の姿もある。
全ては金、命よりも金が優先される。
しかも、このスラムに住む人たちよりも遥かに良い生活環境で生きている人たちを、更に豊かなにするために。

そんな状況を助けるために、住人を田舎に大移動させようとしているのが、今回訪ねたNGOの活動の一つ。
といっても、それなりに大きな土地を購入して、沢山の人を移住させるというのはそう簡単な話ではなく、計画はなかなか進んでいない。

ここのNGOのもう一つの活動は、世界中で貧困をなくす最良の方法の一つとして広く知られているマイクロクレジットをおこなっている。
スラムの人たちが何か新しいビジネスをしたくても、お金を貸してくれるような銀行はいままで存在しなかった。
そうなると、貧困から抜け出せる可能性はかなり少ない。高いリスクを負って高利貸しからお金をかりれば、返済地獄に陥る可能性が高い。
そこで、貧困層のために小額からの融資を可能にしたのがマイクロクレジット。
ノーベル平和賞にも輝いたバングラデッシュのウスユドゥノユヌスに始まり、いまや世界中に広がっている。

そして、今回のNGOはそれを無利子でおこなっている。
すでに、何人かの人がNGOからの融資で小さな露店を開くことができ、生活の向上を図ることが出来た。

スラムでの活動は想像以上に難しい。
反政府的な行動をしているために、当然、命の危険もある。
今回訪ねた時も、話を始める前に、土地を買収した企業名を出さないことや、基本的にこの話をすることは禁止されているので、英語では文章をできるだけ書かないことなどいくつか注意事項を言われた。

スラムの人々を助けに来ているのにも関わらず、ちょっとした勘違いで飲み物に毒を盛られてたこともあったという。
なんの教育も受けず、秩序などない混沌とした世界で生きてきた人々には、僕たちが考えるような常識は通じない。
政府や企業にずっと虐げられて生きているのだから、政府や企業にはじまり、他人を信じることができないのもわかる。

更に健康面の心配もある。劣悪な下水システムによって大量の蚊がいる。
デング熱、マラリアなどにかかる可能性がある、まくっていたズボンの裾を下ろすように言われた。

そんな状況で、人々を助けるために活動しているのは、IBMの専属ヨガトレーナーだったインド人の男性と、彼の奥さんであるフランス人の女性。
二人とも、スラムとはかけ離れた環境で生きてきた。
そして最近やっと、スラム出身の信頼できるインド人女性がスタッフとして働き出した。


環境をテーマに旅をしてきたこの半年。同時に40冊近い環境に関する本を読み、環境について更に深い理解を得ようとしてきた。
そんな中で繰り返し目にしたことが、環境問題の主要な原因の一つが人口問題と、貧困問題であるということだった。

そんなこともあって、貧困をこの目で見てみたいという思いもあった。
そして、もう一つ、環境の旅をしていくにあたって、環境問題の本質が命の問題であることに気がつき、もう少し、命ということを追求したかった。

そんな思いもあって今回このNGOを訪問した。
そして、最後、こんな質問をした。

「こんなに酷い環境の中で、それでも、彼らを生へと動かしているものは何?」

返ってきた答えは、
「単純に生き続けたい、生きていたいという、生への強い想いが、彼らをこの劣悪な環境の中でも生かしている」というものだった。


自分たちは「人間」である前に「生命」つまり「生きる命」であり、
その中には30億年の生命の進化の過程で変わることのなかった生への強力な意思と、
織り成されてきた生きることへの叡智が織り込まれている。

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posted by taku at 01:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 混沌のインド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は5年前から貧困問題をテーマにアジアを回っています。
今回の旅でカルカッタのスラムで写真を撮りたいと思っています。
貧困問題を世界の皆に知ってほしい、世界の人に目を向けてもらいたいと思い、来週にカルカッタへ行く予定です。
もし、良かったらスラムで活動されている夫婦の連絡先を教えてもらえませんか。
Posted by 村上 怜 at 2012年04月08日 19:59
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